出会い

嘘をつくのは病気?「虚言癖」の特徴と心理、対処法

あなたの周りには平気で嘘をつく人がいませんか?「虚言癖」という言葉があります。嘘をついてしまうのは心の病気なのでしょうか?

彼ら、彼女らはどういう心理で嘘をついてしまうのでしょうか。嘘をつく人の特徴や心理が分かれば、嘘をつく人に適切な対処ができるようになります。

「嘘をつくのがやめられない!」という人も、自分がなぜ嘘をついてしまうのか、その原因が分かれば、対策や治療ができます。

嘘をつく病気「虚言癖」の特徴や心理、対処法、治し方をご紹介します。

嘘をつくのは病気?虚言癖の種類と心理

まず結論から言ってしまうと、「虚言癖」という病気は存在しません。

「虚言癖(きょげんへき)」の最後の一文字、「癖」は「くせ」とも読みます。「爪をかむ癖(くせ)」とか「怠け癖(ぐせ)」の「癖(くせ)」です。

つまり、「虚言癖」とは、「嘘をつくせ」のことを表しているのであって、病名ではありません。

では、嘘をつく病気は存在しないのかと言うと、そんなことはありません。「嘘をつく」ことが症状の一つとして現れる病気はいくつかあります。

平気で嘘をつくパーソナリティ障害

もしもあなたの近くにいる人が、他の人を騙したり、傷つけたりするような嘘を平気でついてしまうようなら、その人はパーソナリティ障害かもしれません。

パーソナリティ障害は精神障害の一種で、心の病気です。

パーソナリティとは、考え方、人とのかかわり方、振る舞いなどのことを言い、人ならば誰でも持っているものです。「個性」と言い換えてもいいでしょう。パーソナリティ障害とは、このパーソナリティが他の人の平均から大きく偏っており、それによって、社会生活に苦労したり、社会に迷惑をかけたりするパーソナリティのことを言います。

パーソナリティ障害には10種類あり、嘘をつく症状が現れやすいのは、自己愛性パーソナリティ障害と反社会性パーソナリティ障害です。

自分が大好きな自己愛性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害は、自分は他者よりも優れていて、素晴らしく、偉大な存在で、愛されるべき存在だと思い込んでしまう心の病気です。

一方で、その心の奥にはもろくて崩れやすい自尊心を抱えています。他者からの批判を処理することができず、自分を愛することで自尊心を守ろうとするため、強い自己愛という症状が現れます。

自己愛性パーソナリティ障害は、必ず嘘をつくというわけではありませんが、症状の一つに「嘘をつく」というものがあります。

自分は他人よりも優れていると考えているので、嘘をついて人を騙してもいいと考えてしまうのです。また、自分に問題があると認識していないのも、自己愛性パーソナリティ障害の特徴です。

周りなんてどうでもいい反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害は、社会規範や他者の感情に無関心です。ルールを守らなかったり、誰かが傷ついたりしても何とも思わないのが、反社会性パーソナリティ障害の特徴です。そのため、平気で人を騙す嘘をついたり、ときには暴力をふるったりすることもあります。

自己愛性パーソナリティ障害が、自分は優れているのだから人を騙しても問題ないと考えるのに対して、反社会性パーソナリティ障害は、単に自分が楽しむために人を騙すのが特徴です。

人を愛したり、共感する優しさは欠如していますが、一方で、人の顔色を伺ったり、感情を読む能力に長けています。そのため、嘘をついて簡単に人を操ることができます。トラブルや犯罪を起こしやすいのもこの反社会性パーソナリティ障害の特徴です。

アルツハイマー型認知症・アルコール依存症も嘘つき?

アルツハイマー型認知症やアルコール依存症も、「嘘つき」になることがあります。

アルツハイマー型認知症は短期記憶に障害が起こりやすく、数時間前のことを覚えていない、といったことがあります。また、認知症では、現実と自分が思い込んだこととの区別がつきにくくなります。

そんなときに、「さっき何していたの?」と聞かれると、思い込みを現実と勘違いして曖昧な記憶のまま答えてしまったり、忘れていると思われるのがイヤで確かな記憶がないのにも関わらず適当な答えを言ってしまったりするのです。これが周りからは「嘘をついている」と見られてしまうのです。

アルコール依存症も記憶障害が起こりやすくなります。記憶が無いことを責められるのがイヤで、自己保身のために嘘をついてしまうことがあります。

周りの同情をひきたい虚偽性障害

虚偽性障害は、嘘をついてでも周りの同情をひこうとする、心の病気の一つです。

仮病の一種ではありますが、通常の仮病とはちょっと違います。本当は用事があっったり、あるいはちょっと身体がだるくて学校や会社を休みたいのだけど、そのままの理由が言いにくいので、病気だと嘘をついて休んだり、早退したりすることが仮病です。

通常の仮病は、嘘の一種ではありますが、そこまで人に迷惑をかけたりするものではないので、精神障害ではありません。また、仮病には「会社を休む」などの明確な目的があります。

一方、虚偽性障害は、特に明確な目的があるわけではなく、ただ周りの同情をひきたいという気持ちから、嘘をついてしまいます。

病気のふりをすることで、周りの人が優しく、大切にしてくれるので、それによって満足感を得られるのです。大したことのない傷なのに大げさに痛がったり、ちょっと身体がだるかったり熱があるだけなのにとても辛そうにしたりする場合や、そもそもまったく症状がないのに嘘をついて病気のふりをすることもあります。

嘘を付くのは自己保身のため、かまって欲しいから

パーソナリティ障害や記憶障害、虚偽性障害といった病気ではなくても、嘘をつく人はいます。

パーソナリティ障害ではないのに嘘をつく人の多くは、自己保身のためや、かまって欲しいという理由で嘘をつきます。「虚言癖」といってイメージされるものに一番近いのがこれです。

どうしてそんなに嘘ばかりつくの?という人でも、最初はちょっとした小さな嘘からはじまることがほとんどです。この時点では、嘘をつくことに罪悪感を感じています。

小さな嘘をついて、それによって自分の心や立場を守れたり、誰かからかまって貰えたりすると、嘘をついたことで安心感や満足感が得られます。すると、また別の場面で、安心感や満足感を得るために、小さな嘘をついてしまうのです。そうやって、小さな嘘をつくことにだんだんと抵抗を感じなくなっていきます。

小さな嘘をつくことになれてしまうと、嘘に対する抵抗感がなくなり、嘘を頻繁につくようになったり、すぐにばれるような大きな嘘をついたりするようになります。

もともとは、嘘をつくことで、自分を守ったり、ちょっとかまっても貰ったりすることが目的でしたが、この頃になると、嘘はすぐ周りにバレてしまいます。それでも、嘘をつくことで、安心感や満足感が得られる、という間違った学習をしてしまっているので、簡単には嘘をつくことをやめられません。

本人も嘘をついちゃいけないと思っても、油断をすると自分の意志に反してすぐに嘘をついてしまい、その嘘を隠すためにまた嘘をついてしまうのです。

嘘をつく人をなんとかしたい!虚言癖の対処法

あなたの周りに、すぐに嘘をついて周囲を困らせている人はいませんか?嘘つきには、どのように対処したらいいのでしょうか。

学校の友人や会社の同僚、恋人や家族、あまり関わらないですむ人から、親密なつき合いが必要な人まで、誰もがうそつきになる可能性があります。

嘘つきの原因も、パーソナリティ障害や虚偽性障害といった心の病気によるものや、アルツハイマー型認知症やアルコール依存症などの記憶障害によるもの、自己保身やかまって欲しいという思いから生じるものまでさまざまです。

相手との関係や、原因がさまざまなので、対処法も1つではありません。状況に合わせて、適切な対応を選択することが必要になります。

嘘つきには関わらない、相手にしない

これは嘘つきに対して最も有効で、簡単な対処方法です。ただし、親密なつき合いが必要な相手には使えません。学校でちょっと話すだけのクラスメートとか、仕事上そんなに関わらなくていい職場の同僚の嘘に対処するときに使います。

やり方はとても簡単です。相手が話しかけたり、嘘をついてきたりしたら、「へ~、そうなんだ」とか「ふ~ん」「すごいね~」というような、そっけない返事をすればいいのです。

ポイントは、そっけない返事をすることによって、相手の言葉に興味を持っていない、ということを伝えることです。

自分を愛して欲しいと考えている自己愛性パーソナリティ障害は、相手にされないと自尊心が満たされないので、あなたに近寄ってこなくなります。反社会性パーソナリティ障害も、あなたが嘘に興味を持ってくれないと、自分の楽しみにならないので、わざわざ話しかけてきません。

自己保身やかまって欲しくて嘘をつくタイプの人も、あなたが相手にしなければ、それだけで傷つくので、近寄ってこなくなります。

嘘に迷惑している、うざい、距離を置きたい、と考えている場合には、嘘つきには関わらない、相手にしないというのが最も有効な対処法です。

嘘つきには感情移入しない、同意しない

嘘つきの話には感情移入しないようにすることが大切です。嘘つきはあることないことを織り交ぜてあなたの感情をゆさぶってきます。それに対して、いちいち怒ったり、悲しんだりしていては、嘘つきのペースにハマってしまいます。何を言われても気にしないこと、冷静でいることが大切です。

また、嘘つきの言うことに簡単に同意してはいけません。たとえば、嘘つきがあることないことを交えながら誰かの悪口を言っているのに対して、「えっ!そうなの?」と言ってしまったり、「〇〇さんもそう思うでしょ?」と言われて「うん。そうだね。」などと言ってしまったりすると、あとで他の人に、「〇〇さんがこう言っていたよ」と、まるであなたが言った嘘かのように言いふらされてしまいます。

嘘つきには感情移入しないこと、同意しないこと、この2つを守るようにしましょう。

周りの人と信頼関係を築いておく

嘘つきは自分を守るため、あるいは、周りの関心を惹くために、ときにはあなたを貶めるような嘘をつくことがあります。

そんな嘘をつかれては、たまったものではありません。でも、いくら嘘つきの人に嘘をやめて欲しいと言っても、徒労に終わってしまうことがほとんどです。嘘を認めると、嘘つきの人は自分が傷ついてしまうので、一度ついた嘘を守るために、さらに嘘をつき続けます。

そんな迷惑な嘘つきから自分を守るためには、周りの人と信頼関係を築いておくことが一番です。周りの人との信頼関係があれば、一人が嘘をついていても、気にすることはありません。

普段から周りの人とコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくことは、嘘つきから自分を守るための有効な手段です。

悪意のある嘘には徹底的に立ち向かう

自分を騙そうとしたり、自分の大切な人を騙そうとしたりする悪意ある嘘には徹底的に立ち向かいましょう。

この嘘をつくのは反社会性パーソナリティ障害の人だったり、単純に誰かを騙して利益を得ようとしている人だったりします。あなたや、あなたの大切な人を騙して、楽しんだり、何らかの利益を得たりしようとしているのです。

これらの嘘には徹底的に立ち向かいましょう。相手がついているのは「嘘」なので、必ずどこかでボロが出ます。論理的に破綻する箇所があるので、そこを徹底的について、嘘を突き崩すのです。

理論的に考えたり、話すのが苦手だったりする場合は、そういったことが得意な友人に同席を頼むのも一つの手段です。

ただし、あまり攻撃的になってはいけません。相手が反社会性パーソナリティ障害の場合、躊躇なく暴力に訴えてくる可能性もあります。あくまで冷静に、淡々と対応することが必要です。

嘘をつくのをやめたい!虚言癖の治し方

もしもあなたが嘘をついてしまうクセを持っていて、それを治したいと考えているのなら、嘘つきは必ず治すことができます。

治せない嘘つきは、自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害などの嘘つきです。このタイプの嘘つきは、そもそも自分が嘘つきだという自覚がなかったり、嘘をつくことに罪悪感を感じていなかったりします。

もしも、あなたが嘘をつくことに少しでも罪悪感や抵抗を感じていて、嘘つきを治したいと考えているのなら、あなたは自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害ではありません。

あなたの嘘は必ず治すことができます。

嘘は癖(くせ)なので、治療には時間がかかる

もしもあなたが嘘を治したいと思っていても、自分の意志に反して、気がつくと嘘をついてしまっているのなら、それは嘘をつくことが癖(くせ)になってしまっています。いわゆる「虚言癖」です。

クセは無意識のうちにやってしまうことなので、一見すると簡単にやめられそうですが、実際にはクセを治すのはなかなか大変なことです。

まずは、クセを治すには時間がかかることを覚悟してくだし。クセを治すには、そのクセが身についたのと同じだけの時間がかかります。

もちろん、何かインパクトのある荒療治をすれば、短期間で治ることもありますが、それはあくませ荒療治なので、あなたの精神にとってあまりいいことではありません。

時間をかけて、ゆっくり治していきましょう。

まずは自分の嘘と向き合うことからはじめる

嘘つきのクセを治すには、まずは無意識でついてしまっている嘘を、自覚することが大切です。「あっ、また嘘をついてしまったな…」そう思ったら、自分がついた嘘をメモしておいてください。スマホにメモをしてもいいし、嘘日記のようなものを作って、それに毎日書いてもいいです。

自分がついた嘘を改めて書き留めることで、嘘を意識的に認識できるようになります。これを繰り返すと、無意識に嘘をつこうとしたときに、「あっ!私、嘘をつこうとしている」と意識的に認識できるようなります。

こうして少しずつ、無意識でついてしまう嘘をコントロールしていくのです。まずは、自分が嘘をつこうとしている瞬間が分かるようになることが大切です。次に、嘘をつく瞬間が分かるようになったら、それを少しずつ止めるよう努力していくのです。

まとめ

虚言癖の種類と心理、嘘をつく人への対処方法、虚言癖の治し方をご紹介しました。

自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害の人は、嘘をつくことを何とも思っていません。このタイプの嘘には、できるだけ関わらないようにするのが一番です。

それ以外の人がつく嘘、いわゆる虚言癖の人がつく嘘は、自己保身のためだったり、かまって欲しかったりしてつく嘘です。このタイプの人は、自分の嘘に多少なりとも罪悪感や抵抗感を感じています。嘘つきを治したいと思っても、やめることができず、苦しんでいる人もいます。

虚言癖は癖(くせ)なので、必ず治療することができます。でも、クセを治すには、クセが身に着いたのと同じだけの、長い時間がかかることを覚悟してください。

嘘は自分も、人も傷つける可能性があります。最初は小さな嘘でも、嘘つくことがクセになると、嘘がやめられなくなってしまいます。「嘘をつかない」ことが一番です。

もっと読む